東京地方裁判所 昭和45年(ワ)3007号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告会社が加害車を所有していたことは当事者間に争いがない。しかし被告会社は「所有権留保付割賦販売した車と同視すべき加害車により本件事故が発生したものであるから、運行供用者責任はない」旨主張するので検討する。
<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。即ち、被告会社は自動車の販売を業とする会社であるところ、昭和四一年一一月三〇日訴外株式会社東谷工務店(社長は被告東谷)に対し販売車を所有権留保の約束で割賦販売した。昭和四二年四月右販売車が故障したため、被告会社において修理することとなつた。この修理期間中、被告東谷において右販売車を乗用できない不便を補なうために被告会社は被告東谷に加害車を貸与した。それから四日後である本件事故当日の午前中、被告会社は被告東谷に対し「午前一一時までに加害車を被告会社まで持参して返還されたい」と電話で申し入れがあつたので、被告東谷は自から加害車を運転して返還すべく被告会社へ赴く途中、本件事故を発生せしめた。
被告会社は「販売車についての割賦代金の円満な回収を主たる目的として修理期間中の被告東谷の便宜を考えて加害車を好意的に無償貸与したものである」旨主張するところ、かりに右主張の如き意図のもとに加害車が貸与されたとしても、それは右被告両者間の親密な人的信頼関係を基礎にして、貸与するだけの利益を得られればこそ貸与したものと推認できるし、前認定のとおり、貸与から四日後に被告会社の返還要請にもとづき直ちに返還に赴いている事実からみても、被告会社の加害車に対する運行の支配が喪失しているとはいいがたい。従つて、被告会社にとつては加害車により惹起された本件事故につき、加害車を販売車と同視すべきでなく、運行の支配と利益とが被告会社になお帰属していたものと認めるのを相当とし、運行供用者責任があるというべきである。(竜前三郎)